実践!相続税対策
贈与の取り消し【実践!相続税対策】第758号

2026.08.12
おはようございます。
税理士の北岡修一です。
相続税や所得税の税金対策になると思って、贈与をしてしまったのだけど、後々特例が適用できないことがわかったりして、贈与を取り消したい、という場合があります。
たとえば、住宅取得資金贈与の非課税特例を使おうと思って、子に資金を贈与したが、既に子が自分で支払った後だった、ケースなどです。
この場合は、贈与したお金で住宅を取得していないため、非課税特例を適用することはできません。
お金の贈与の場合は、そのお金を使っておらず、贈与税の申告もしていない、もちろんお金も返金すれば、贈与を取り消すことは可能です。
ただ、不動産の贈与の場合には、ちょっと違ってきます。
たとえば、将来相続争いにならないようにしたい、また、不動産価格もどんどん上がっているので、今のうちに同居している子に、自宅不動産を相続時精算課税を使って贈与したい、というようなケースです。
確かに生前に贈与してしまえば、遺産分割の対象にはなりませんし、遺言を書くよりも確実にその不動産を、同居している子に渡すことができます。
しかも、不動産の評価額は、贈与したときの価格に固定され、今後の値上り益が、相続税に反映されることもありません。
一見良い方法のように思われます。
ただ、相続時精算課税は贈与した財産を、相続財産に足し戻して相続税を計算し、支払った贈与税があればそれを控除することになります。
名前のとおり、相続時に税金を精算する課税方式です。
問題は、相続時精算課税で贈与した不動産は、相続税の計算において、小規模宅地特例が使えない、ということです。
ご存じの方も多いかと思いますが、自宅不動産(宅地)は、330m2まで80%評価減できる小規模宅地特例を適用することができます。
同居している子であれば、この特例の適用を受けることができます。
ただし、この特例は相続または遺贈により取得する必要があり、相続時精算課税贈与で取得した財産には適用することができません。
このことを、贈与した後に税理士等から聞いて、それであれば贈与を取り消したいが、できるのか、という相談を受けることがあります。
ただ、不動産の場合は登記をしていますので、それも取り消さなければなりません。
まず、登記の方ですが、不動産贈与の契約当事者が合意すれば、贈与契約をなかったことにすることができます。
これを合意解除といいます。
贈与契約を合意解除すると、贈与により受贈者に移転した不動産の所有権は、贈与者に戻ることになります。
ただし、贈与したときにかかった登録免許税や不動産取得税は、原則として戻ってきません。
さらに、元の名義に戻すときも、またこれらの税金がかかってきます。
次に贈与税の方ですが、こちらは登記のように簡単にはいきません。税務上は合意解除をしても、原則として贈与税が課税されます。
ただし、特例があり、次の条件をいずれも満たした上で、税務署長が、贈与税を課税することが著しく負担の公平を害すると認める場合には、贈与はなかったものとして取り扱うことができる、とされています。
1.贈与税の申告期限までに贈与が取り消されていること
2.受贈者が贈与された財産を処分していないこと
3.贈与者または受贈者が、所得税等の申告や届出をしていないこと
4.受贈者が当該財産の果実を収受していないこと・収受している場合には、その果実を贈与者に引き渡していること
賃貸物件を贈与した場合は、契約を変更して家賃を収受していたり、青色申告や消費税の届出をしていたり、中々難しい面もあるかも知れません。
ただ、自宅であれば時期にもよりますが、上記条件を満たすことはさほど難しくはないかと思います。
いずれにしても、大きな財産を贈与するときは、税理士など専門家に相談して、慎重に行うことをお勧めします。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
いつもとは違った方向から台風が来たせいか、暑さを吹き飛ばしてしまったような感じですね。
今朝は大分涼しく感じます。
夏休みの方も多いかと思います。是非、楽しい良い夏休みを!
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