不動産 税金相談室
配偶者居住権の思わぬ落とし穴と注意点【不動産・税金相談室】

2026.09.22
Q 長年連れ添った妻のため自宅に配偶者居住権を設定する遺言書を検討しています。もし将来、妻が施設に入るようになった場合、何か問題がありますでしょうか?
A 配偶者居住権を設定することで二次相続の節税になる一方、奥様が施設へ入居した際は自宅の売却や賃貸が難しくなるなどの制限がかかるため、十分な注意が必要となります。
配偶者居住権は、ご質問者が亡くなられた後に残された奥様が、住み慣れたご自宅に終身、または一定期間住み続けられる権利をいいます。
ご自宅を「住む権利」と「所有する権利」に分け、お子様などが「所有する権利」を相続することとなります。
税務的には、次の相続(二次相続)が発生した際の相続税を、大きく節税できる点にメリットがあります。 というのも、配偶者居住権は奥様が亡くなられた時点で消滅するため、奥様の相続財産にこの権利が含まれないこととなるためです。
また、一次相続でお子様が所有権を単独で相続し、一定の要件を満たせば、「小規模宅地等の特例」を適用して敷地の評価を80%も減額できるため、ご家族全体の税負担を大きく減らせる可能性もあります。
ただし、奥様が将来老人ホームなどに入居し、自宅が不要になったときには、問題が生じる可能性があります。 というのも、配偶者居住権は「住むための権利」であるため、 原則として第三者へ譲渡や売却ができないためです。
つまり、施設への入居資金等が必要になったとしても、 ご自宅の権利を売って現金化することができない、 という大きなデメリットがあります。
また、第三者に賃貸して家賃収入を得たいと考えても、 所有権を持つお子様の承諾がなければ貸し出せません。所有権を持つお子様にとっても、配偶者居住権が ついている状態では、事実上売却は不可能となります。
さらには、配偶者居住権を設定している期間の途中で、 配偶者居住権を合意解除した場合は、お子様へこの権利を無償移転したとみなされ、多額の贈与税が 課されるリスクが生じてきます。
そのため、遺言書を作成される際は、将来奥様が介護施設へ入居する可能性なども考慮し、 ご家族全員で十分に話し合うことが大切となります。
なお、配偶者居住権を使わずに、婚姻期間20年以上の夫婦間で使える「贈与税の配偶者控除(2,000万円非課税)」 を活用して、生前贈与するのも1つの有効な手段です。
また、ご家族を信託の受託者とする「家族信託」を利用して、 不動産の凍結リスクを防ぐ方法もあります。
最適な選択をするため、まずは不動産税務に詳しい 専門家へご相談されることをお勧めいたします。
≪担当:資産税部 太田 遼≫
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