実践!相続税対策
小規模宅地特例と配偶者の税額軽減【実践!相続税対策】第699号
2025.06.18
おはようございます。
税理士の北岡修一です。
前々回、小規模宅地特例をどの土地に使うか、対象となる土地を取得したすべての人の同意がなければ、適用することができない、という話をしました。
小規模宅地特例は、自宅(居住用)の場合は330m2まで80%評価減、アパートなど貸付用の土地は200m2まで50%評価減をすることができます。
その他にも、事業用や同族会社の事業用の土地などは、400m2まで80%評価減をすることができます。
面積制限がありますので、対象となる土地が複数ある場合は、どの土地に特例を適用するか、選択しなければなりません。
当然、評価減の額が大きい土地に小規模宅地特例を使うのが得策、ということに一般的にはなります。
ただし、必ずしもそうではない、という事例が先日あありました(下記、実際の事例をアレンジしてます)。
ご自宅が100坪以上と広く、路線価も高いので、この自宅の敷地に小規模宅地特例を使う予定でした。
自宅敷地の場合には、330m2まで80%評価減でき、これをフルに使うことができます。約8,000万円の評価減と、かなりの評価減ができます。
ただ、この土地を相続するのは配偶者でした。
配偶者にはご存じのとおり、配偶者の税額軽減という規定があり、配偶者の法定相続分(配偶者と子が相続人の場合は1/2)か、1.6億円のいずれか多い金額まで相続しても、相続税はかかりません。
その相続の場合は、配偶者は法定相続分まで相続していませんので、小規模宅地特例を使っても、使わなくても相続税はかからない状況でした。
一方、子が相続する貸付事業用宅地の方で小規模宅地特例を適用した場合は、評価減の額は約2,000万円であり上記とは6,000万円もの差があります。
当初は、これだけ差があるので、自宅で小規模宅地特例を使った方が得だと誰もが思い込んでいました。
配偶者が、小規模宅地特例を使っても使わなくても税金がかからないとしても、全体の相続財産額が大きく減りますので、子の相続税も下がってくるからです。
ところがよくよく計算してみますと、子が相続する貸付事業用宅地の方に小規模宅地特例を使った方が、相続税が数百万円低くなることがわかりました。
小規模宅地特例の評価減額が減っても、課税される相続財産の全体額が増えたとしても、配偶者の税額軽減を使った方が相続税が低くなったのです。
小規模宅地特例は、このメルマガでもよく書いていますが、本当にこの特例の使い方によって、相続税はずい分違ってくるのだな、ということが改めてわかりました。
土地をお持ちの方、特に複数お持ちの方は、生前からこの特例を有効に使えるよう、よく考えておくことをお奨めしたいですね。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
昨日は朝からものすごく暑かったですね。朝から30℃近くもありましたが、歩いていると照り返しも強いので実際にはもっと高いのではないでしょうか?
梅雨の合間の今日もいい天気ですが、また、相当高くなりそうですね。皆様、熱中症には気を付けましょう。
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