実践!相続税対策
2つの3,000万円控除における趣旨の違い【実践!相続税対策】第742号

2026.04.23
おはようございます。
税理士の北岡修一です。
居住用財産(不動産)を売却した際には、2つの3,000万円控除があります。
1つは、自宅を売却した場合の3,000万円控除、もう1つは、相続した空き家(亡くなった方が住んでいた自宅)を売却した場合の3,000万円控除です。
両制度には、建物を取壊して売却するケースが含まれています。
自宅を売却した場合の3,000万円控除は、原則として建物とセットで売ることが条件ですが、以下のすべての要件を満たせば土地のみの売却でも適用可能です。
1.家屋を取壊した日から1年以内に土地の売買契約を締結すること
2.その家屋に住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに譲渡すること
3.取壊してから契約の日まで、貸駐車場など他の用途に使用していないこと
一方、相続した空き家を売却した場合の3,000万円控除には、次の要件があります。
1.一定の耐震改修工事を行った家屋とともに土地を譲渡するか、家屋全部の取壊しをした後に土地を譲渡すること
(令和6年1月1日以後の譲渡については、譲渡の翌年2月15日までに耐震改修工事または取壊しを行えばよいことになりました)
2.相続の開始があった日から3年目の年の12月31日までに売却すること
3.相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。
4.また、家屋を取壊した場合は、取壊しの時から譲渡の時まで建物または構築物の敷地の用に供されていたことがないこと
両制度とも、3年目の年の12月31日までに売却すること、は共通しています。また、取壊し後、他の用途には使用してはいけない、というのも同じです。
ただし、自宅を売却した場合の3,000万円控除には、取壊した日から1年以内に土地の売買契約を締結すること、という要件が入っています。
相続した空き家を売却した場合には、この1年以内の契約締結要件は入っていません。
ここが違うところですね。
これは、両制度の趣旨の違いによります。
自宅を売却した場合の3,000万円控除は、「個人の生活基盤を守るため」の制度です。
自宅を売って利益が出たからといって、そこに多額の税金を課すと、次の自宅を購入する資金が減り、生活水準を落とすことになるからです。
古い家屋があると売りにくいこともあり、家屋を取壊して売ることも住み替えのためのやむを得ない手段として認めよう、というものです。
一方、相続した空き家を売却した場合の3,000万円控除は、「空き家という社会問題を解決するため」の制度です。
放置された耐震性のない古い空き家は、防災・防犯・景観上のリスクになります。
このような空き家をなくし、市場に流通させることが目的となっています。
したがって、取壊しに積極的に取り組んでもらうために、1年以内の契約締結要件などは付けていない、ということになります。
以上、同じ3,000万円控除でも、趣旨が違うことを知っておくと良いかと思います。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
今、弁護士さんとともに当社メンバーで空き家問題の本を書いています。発行されましたらご紹介したいと思います。
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