東京メトロポリタン税理士法人

お問い合わせ

〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-24-1 西新宿三井ビルディング17F

  1. HOME
  2. メールマガジン
  3. 実践!事業承継・自社株対策
  4. 事前確定届出給与と役員賞与引当金【実践!事業承継・自社株対策】第164号

実践!事業承継・自社株対策

事前確定届出給与と役員賞与引当金【実践!事業承継・自社株対策】第164号

事前確定届出給与と役員賞与引当金【実践!事業承継・自社株対策】第164号

2023.08.31

Q 当社は8月末決算ですが、今期は利益が出たため、決算賞与を出したいと考えています。

役員に対しても出したいのですが、役員賞与は損金不算入となるため、翌期において事前確定届出給与として、出したいと思います。

この場合、今期8月決算で役員賞与引当金を計上しても良いのでしょうか?

A 役員に対する給与は、毎月の役員報酬として支給する定期同額給与と、事前に税務署に届出をして支給する事前確定届出給与が、中小企業では基本となります。

事前確定届出給与は、役員賞与的な給与として活用されています。

その事前確定届出給与の額を決めるにあたって、前期の実績数値を元に決めることは、問題ありません。

あくまでも参考情報として前期の数値を活用しているに過ぎないからです。

問題は、その事前確定届出給与が、どの職務執行期間における職務執行の対価であるか、ということです。

9月以降の新年度の職務執行期間に対するものであれば、新年度の損金に算入することができます。

ところが、ご質問のように今期の8月決算で、役員賞与引当金を計上した場合は、この役員賞与は、今期の職務執行期間に対するものであると解される可能性があります。

会計処理をするというのは、法人の意思を表すものであるからです。引当金を8月決算で計上することは、この費用は今期の費用である、ということを表明していることになります。

そうなると、9月に事前確定届出給与を届出しても、既に届出期限を過ぎてしまっている給与となり、損金算入することができません。

この件について参考となる裁決事例が、本年、令和5年2月3日裁決/仙裁(法)でありました。

その事例では、上記と同様に役員賞与引当金を計上した上で、事前確定届出給与を翌期に支給していました。

原処分庁(税務署)は、これを否認しましたが、国税不服審判所では、これが覆され、事前確定届出給与の損金算入が認められることになりました。

その主な理由としては、

・取締役会議事録には、いつの職務執行の対価かを明確に示す記載がない。
・過去の職務執行の対価であることをうかがわせる記載もない。
・毎月の定額報酬と合計した上で承認されていたことから、当該年度の職務執行の対価と考えるのが自然。

また、役員賞与引当金との関係においても、

・必ずしも支給方針どおりに運用されていたわけではない。
・業績賞与のすべてを、引当金処理していたわけではない。
・引当金の会計処理は会計上の判断であり、会社の意思決定を直接明らかにするものではない。

ということで、事前確定届出給与が認められることになりました。

会計処理は会社の意思、というのが基本的な考え方だったとは思いますが、そうではない、というのはちょっと衝撃的なことですね。

私個人の考えとしては、事前確定届出給与を新年度の役員賞与とするのであれば、前期において役員賞与引当金は計上すべきではない、と思います。

また、上記裁決事例の中にも出てきますように、取締役会議事録などに、いつの職務執行期間の対価なのかを、明確に記載することが重要かと思います。

《担当:税理士 北岡修一 》

編集後記

8月末になりました。決算期を迎え、それ以後に決算賞与を出す場合には、期末までに従業員に対しては、個別の決算賞与の金額、1か月以内の支給日を通知する必要があります。
8月決算の会社の方には、是非、今日中に通知をしてください。

メルマガ【実践!事業承継・自社株対策】登録はコチラ
https://www.mag2.com/m/0001685356.html

税務・財務・経営のご相談はお問合せフォームへ

税理士セカンドオピニオン

<< 実践!事業承継・自社株対策 記事一覧