実践!事業承継・自社株対策
非上場株式の評価方式見直しの方向性(6)【実践!事業承継・自社株対策】第320号

2026.10.01
Q:第6回有識者会議において、残余利益方式を採用する場合の帳簿価額や利益の調整については、どのような議論がされたのでしょうか。
A:残余利益方式は、直前期末の簿価純資産に企業の収益獲得能力を加算して評価するわけですが、簿価純資産や収益獲得能力の計算において、下記のような修正をする必要性が検討されています。
1.多額の含み損がある場合の減損
以下の2つの要件の下、減損を反映することとしてはどうか。
(1)減損の判定
「一般に公正妥当と認められる会計基準」に照らし、減損が生じていることを、決算公告等により明らかにしていること
(2)減損の金額
減損額は、当該資産の簿価が相続税評価額を上回る部分に限ること
※ただし、含み益を考慮しない一方で、含み損を考慮することの妥当性について、整理・検討が必要
2.利益操作(オペレーティングリース)への対応
オペレーティングリースに係る損益を、非経常的な損益として除外し、会社の正常利益を算定して評価する。
※利益のほか、純資産についてもオペレーティングリースがなかったものとして修正する。
※その他に、短期的に損益の調整が可能な商品等があれば、同様の対応が必要。どのようなものがあるか。
3.利益操作(役員報酬・役員退職金等)への対応
(1)親族に対する役員報酬
親族役員に対する役員報酬のうち、経営の対価を上回る部分として、一定の割合については損金から控除して評価することとしてはどうか。
※以下の点から慎重な検討が必要
・法人税法上の損金不算入規定により、既に調整済であることと整合しない。
・適正な役員報酬はいくらかと、一律に決めることが妥当といえるのか。
(2)一時的な役員退職金等
役員退職金等のような非経常的損失がある場合は、残余利益方式における正常利益の計算に際し、損金から控除して評価することとしてはどうか。
4.子会社株式を有する場合の修正範囲
グループ法人税制により、何ら税負担がなく資産移転が可能なグループ法人の「完全支配株式」に限り、簿価によらず、適正な価額に修正の上、親会社の評価額に反映させることとしてはどうか。
5.従業員持株会を有する場合の持株会株式の評価方法
・固定価格の従業員持株会の株式は「一定の要件」を満たす場合、当該固定価格により評価する。
・固定価格により従業員持株会の株式を評価する場合、それ以外の株式は、次のように評価することとしてはどうか。
(1)算定した企業価値の総額から、従業員持株会の株式評価額合計を控除し、
(2)発行済株式数から、従業員持株会株式数を差し引いた株数で株式保有割合を計算して評価し、企業価値総額に対するバランスを取ることとしてはどうか。
※上記「一定の要件」とは
・従業員持株会を通じて保有する株式であること
・従業員持株会の規約等において、持株会株式の価額等が定められていること
・従業員持株会からの退会時は、固定価格での買取により、株式の持出しはできないこと など
6.純資産価額方式の選択適用(実質の頭打ち)
・現行の評価体系においては、実質的に純資産価額を上限とする取扱いがある。
・この取り扱いについて、存置すべきかの検討にあたり、純資産価額方式の位置付けから整理が必要
※今回の見直しにより、原則的評価方式でなくなる純資産価額方式の選択を認める妥当性をどのように説明できるか要検討
以上のような調整を、簿価純資産あるいは過去の利益に加えた上で、残余利益方式で評価することが検討されています。
来週は、もう1つの論点である、特定の評価会社における個別論点について解説します。
《担当:税理士 北岡 修一》
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