実践!事業承継・自社株対策
勇退退職金または死亡退職金が株価に与える影響【実践!事業承継・自社株対策】第280号

2025.12.18
Q:私は現在、父と二人で代表取締役を務めています。
そろそろ父が引退を考えているようで、最近退職金について話がでました。
父が現役の時に支給する場合(勇退退職金)と、亡くなってから支給する場合(死亡退職金)とで、どのように株価に影響がありますか。
A:お父様に勇退退職金として支給するか、死亡退職金として支給するかで、株価に影響するタイミングなどが異なります。
まず、勇退退職金の場合ですが、退職金は、法人の費用(特別損失)になりますから、利益を大きく圧縮することになります。
これにより、3つの比準要素のうち、利益および純資産が減少することから、翌期の類似業種比準価額が下がります。
また、その退職金支給額した分、資産が減少することになります。これにより、純資産価額も引き下がることになります。
このため、まだ株式をお父様が保有されている場合は、お父様が退職された事業年度の翌事業年度が、株式の承継のよい機会になるかもしれません。
次に、死亡退職金の場合ですが、亡くなった時に株式評価をする場合の類似業種比準価額には影響を与えません。
一方、純資産価額には、債務として計上することができ、純資産価額が減少します。
なお、勇退退職金の場合も、死亡退職金の場合も大きな支払いをご検討の場合、保険への加入をされていることが多いかと思います。
多額の退職金を支払っても、多額の保険金収入があれば、費用と収益が相殺され、結果として株価に影響がないこともあります。
保険積立金の計上状況なども含め現状をしっかり把握し、株価がどのような動きをするのかご確認いただければと思います。
最後に、勇退退職金には所得税がかかりますが、死亡退職金には所得税がかかりません。
勇退されたのち、すぐにお亡くなりになった場合は、まず、勇退時に所得税を支払い、その手取り額に相続税がかかることとなります。
勇退退職金とするか、死亡退職金とするかは、会社の利益の状況や純資産価額、保険への加入、個人財産の状況やご健康の状態など、さまざまな点を考慮して検討する必要があります。
《担当:税理士 青木 智美》
編集後記
今年ももう12月になりました。毎年同じことを思います。
いつもあっという間に1年が過ぎていきますが、1年を思い返してみると、例年同様、濃厚な年でした。
皆様にとって、今年は、どのような年でしたでしょうか。充実した年であれば喜ばしい限りです。
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