実践!事業承継・自社株対策
会社に賃貸している建物を会社に譲渡した場合【実践!事業承継・自社株対策】第259号
2025.07.24
Q:同族会社を経営している者ですが、事業承継や相続対策をにらんで、現在会社に賃貸している個人所有の建物を、会社に譲渡しようと考えています。
これにより後継者の相続税も減って、事業承継をしやすくなるとのことですが、どのような仕組みですか?
なお、私の所有する不動産は、上記の会社に賃貸している土地建物の他、土地約100坪の自宅不動産があります。
A:現在は、建物を会社に賃貸していますので、その土地は貸家建付地として評価します。
この場合は、その地域の借地権割合にもよりますが、自用地価格の約80%の評価となります。
さらに、貸付事業用宅地の小規模宅地特例を使うことができれば、200m2まで50%の評価減ができます。
ただし、自宅土地が約100坪あるとのことで、そちらの方で、居住用の小規模宅地特例(330m2まで80%評価減)を使ってしまえば、貸付事業用宅地の小規模宅地特例は使うことはできません。
ご質問のように会社に建物を譲渡した場合は、土地を会社に貸す形になりますので、貸宅地となります。
この場合においては、将来土地を無償で個人に返還する旨を記載した「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出します。
これにより、会社は借地権設定の権利金を払わないことによる認定課税(借地権の贈与を受けたものとして課税)を回避することができます。
この場合の土地の評価ですが、貸宅地として自用地価格から20%評価減することができ、80%の評価となります。貸家建付地評価とほぼ同じです。
その上で、特定同族会社事業用宅地として小規模宅地特例を使うことができ、400m2まで80%評価減をすることができます。
しかも、自宅の土地で居住用の小規模宅地特例(330m2まで80%評価減)を使っていても、400m2まで80%評価減がフルにできますので、相続税を大幅に減額することができます。
ただし、会社と個人でしっかりと土地の賃貸借契約を結び、通常相場の地代を支払っていることなど、いくつか要件がありますので、それを満たす必要があります。
なお、会社に賃貸している土地について貸宅地として20%評価減した金額は、ご質問者の株式を評価する際、借地権として純資産価額に加算する必要があります。
個人の土地や建物を会社で使っている場合には、検討すべき事項です。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
個人の不動産を同族会社が使っている場合などは、どのような所有関係や契約形態が良いのか、賃料はどのくらいにすべきなのか、株式評価への影響はどうなるのか、など、いろいろ検討すべきことがありますね。
是非、顧問税理士さんと共に検討、見直しをしてみることを、お奨めします。
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