実践!相続税対策
家族信託の基礎【実践!相続税対策】第378号
2019.03.20
おはようございます。税理士の利根川裕行です。
家族信託という言葉を聞いたことがある方は、意外と多いのではないでしょうか?
信託という言葉を聞くと、証券会社の商品をイメージしてしまいますが、そうではありません。
家族信託は、財産の所有者が、財産の管理・処分を、身内等にお願いするような場合の、信託の俗称をいいます。
一般的には、財産の所有者が親で、財産の管理・処分を子に託すような、家族間での信託契約となります。
家族信託を説明する場合の、主な登場人物は3名です。
なお、管理・処分を託す財産を信託財産といいます。信託財産が不動産である場合を想定して、ご説明していきます。
・委託者(信託財産の所有者)
・受託者(信託財産の管理等を行う者)
・受益者(信託財産から生じる利益を受け取る者)
不動産の所有者は、不動産の名義人であり、その不動産から得られる利益を受ける権利を持ち合わせています。
信託することで、この名義と利益を分けられるところに、信託の特徴があります
父親が所有する賃貸不動産について、管理・処分を長男に託す場合を例にみていきます。
賃貸不動産の名義は父親であり、賃貸料収入を得る人も父親です。
信託をすることで、賃貸不動産の管理・処分を託された長男に、その名義は移ります(信託財産として登記されます。)
しかし、賃貸料収入は、従来どおり、父親のままとすることも可能です。
家族信託の活用例の代表として、認知症対策が挙げられます。
通常、不動産の所有者である父親が認知症になった場合、生前に、その不動産を処分するようなことは困難です。
しかし、家族信託を活用すれば、受託者に名義が移っていますので、生前に、受託者が不動産を処分することも可能です。
当然、勝手に処分することはできませんので、信託契約書に売却するための内容を盛り込む必要があります。
その処分の際の利益は、父親に入ることにすることで、父親の生活資金に充てることも可能となります。
家族信託を活用した場合の、税務上の取扱いを簡単に見ておきましょう。
まず、財産の管理を任された受託者は、信託財産が不動産以外の場合は、課税関係は生じません。
信託財産が不動産の場合、所有権移転登記の必要性から、登録免許税がかかります。
信託を取得原因とする場合の登録免許税は、通常の1/5に軽減されます。
なお、不動産取得税はかかりません。
委託者と受益者が同じ方である場合も、信託契約(名義変更)時点での、課税関係は生じません。
委託者と受益者が異なる場合には、信託契約(名義変更)時点で、受益者に贈与税が課される可能性があります。
たとえば、父親所有の賃貸不動産の管理を長男に委託し、その不動産からの賃貸収入を母親が得る場合です。
家族信託契約と同時に、母親は、賃料収入を得られる権利を取得したことになります。
つまり、利益を受ける権利を贈与により取得したと考えられるのです。
実務上、家族信託を利用する目的にもよりますが、委託者と受益者が異なるケースはあまりありません。
正直、家族信託を利用することで、相続税法上のメリットはあまりないということになります。
家族信託の活用につきましては、代表的な例示を挙げたに過ぎません。
また、家族信託については、信託契約書の内容がとても重要になります。
家族信託の活用提案や信託契約書の作成については、一般的には、司法書士が得意とする分野です。
家族信託についてご興味がある方は、私どもにご相談いただければ、信託を得意とする司法書士をご紹介することも可能です。
編集後記
今月初旬に、三鷹市主催の空き家対策セミナーに税務相談員として参加してきました。日曜日ではありましたが、市長挨拶があったり市役所の担当者が来られていたりと、空き家対策に力を入れられている感じを受けました。個別相談の件数も多かったため、確定申告時期ではありましたが、精神的に救われました。
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