不動産 税金相談室
年収の壁と不動産収入【不動産・税金相談室】
2025.10.14
Q 妻は現在、仕事やパートをしていないものの、相続した不動産から駐車場の賃貸収入を得ている状況です。
最近、年収の壁という言葉をよく耳にしますが、会社員である私や、不動産収入がある妻には、どのような影響があるのでしょうか。
A ご自身が不動産収入を得られている場合にももちろん影響はありますが、ご質問のように、ご家族に不動産収入がある場合には、配偶者控除や扶養控除に影響を及ぼすことになります。
これまで38万円であった基礎控除額は、令和7年から最大95万円に拡大されます。それと共に、給与所得控除額が55万円から65万円に増額されます。
したがって、給与所得者であれば合わせて最大160万円がいわゆる「年収の壁」となります。
基礎控除額は、給与所得控除後の合計所得金額によって段階的に減っていく仕組みは変わりませんが、これまでより段階が細分化されています。
合計所得金額が132万円以下であれば、基礎控除額が最大の95万円となるものの、655万円超から2,350万円以下では58万円となります。
従来の基礎控除額は最大で48万円でしたので、合計所得金額が2,350万円までは、これまでより基礎控除額が増えることとなります。(2,350万円超はこれまでと同じです)。
合計所得金額は、給与所得だけでなく不動産所得も含みますから、不動産収入があれば、確定申告にて所得を合算して判定することになります。
さて、ご質問のケースでは、奥様の収入は賃貸収入だけとのことですので、経費や控除額などを差し引いて不動産所得を計算し、そこから基礎控除額がどれだけになるのかを、まず確認していただく必要があります。
ご質問者については、奥様の収入によって配偶者控除または配偶者特別控除を受けることができますが、これも改正があるため注意しなければなりません。
配偶者控除については、これまで配偶者の合計所得金額が48万円以下でなければならなかったところ、改正により58万円に増加しています。
また、配偶者の合計所得金額が58万円を超える場合は、配偶者特別控除に切り替わり、段階的に控除額が縮小(合計所得金額133万円超になると0)しますが、95万円までは配偶者控除と同額を控除することができます。
つまり、奥様の賃貸収入にかかる不動産所得が95万円までであれば、奥様は基礎控除額の範囲内のため所得税が発生せず、ご質問者も配偶者控除または配偶者特別控除を受けられることになります。
このように複雑になった「年収の壁」の改正ですが、今年の年末調整や、その後の確定申告のために、勤務先を含め各所でしっかりと確認をした上で、お手続きしていただきたいと思います。
≪担当:税理士 樋口 智勇≫
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