実践!事業承継・自社株対策
会社分割後の株式持ち合いの解消方法【実践!事業承継・自社株対策】第251号
2025.05.31
Q:昨年亡くなった父が経営していた会社の株式を、私と弟で1/2ずつ相続しました。
その後、会社分割によりA社・B社の2社に事業を分割しました。A社を私が経営し、B社を弟が経営します。
株式はそれぞれが両社の株式を50%ずつ持つ税制適格の分割(分割型分割)をしております。
これをそれぞれが単独で100%所有する形にしたいのですが、無税で交換等できる特例はあるのでしょうか?
ないとしたら、どのような方法で行うのが税務的に得策でしょうか?
A:相続後、会社分割をして、兄弟それぞれが経営するようにするのであれば、ご質問のように分割型分割をするのが良いかと思います。
ただし、この場合、ご質問のとおり兄弟がそれぞれの会社の株式を50%ずつ持ち合う形になります。
これを解消するには、それぞれが持つ株式を譲渡し合う、(交換する)という方法が、まず考えられます。
価格が同じであれば金銭のやり取りがなくても良いのですが、この場合でもそれぞれには譲渡所得が発生します。
一定の要件を満たせば譲渡がなかったものとする交換特例というものがありますが、これは土地や建物などの固定資産を交換した場合の特例です。
有価証券の場合には、これを適用することはできません。
したがって、譲渡所得が発生する場合は、分離課税となって20.315%の譲渡所得税(住民税含む)がかかることになります。
また、それぞれの会社が自己株式として買い取るという方法も考えられますが、この場合には買取価格が資本金等を上回る部分は、みなし配当とされてしまいます。
そうなると他の所得と合算して総合課税となり、累進税率が適用されることになりますので、税金が高くなる可能性があります。
したがって、以上から考えると、株式を相互に譲渡し合う方法が無難ではないかと考えます。
考えようによっては、株式の交換のようなものですから、買取資金はほぼかからず、譲渡益の20%程度の税金で済むわけですから、すっきり会社を分離するためのコストとして、割り切って考えるのが良いのではないでしょうか。
なお、適格分割をした後の株式の継続保有要件ですが、親族で100%保有している完全支配関係のある会社の場合は、親族間で譲渡し合ったとしても、親族による完全支配関係は継続しますので、継続保有要件には抵触しません。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
今週末で5月が終わります。5月は私ども税理士法人にとっては3月決算の申告月、新年度に向けての取締役会、株主総会などが目白押しということで、本当に多忙な月でした。
同時に新しい年度、体制へリセットされるということで、新たなスタートの月でもありますね。
そんなこともあり、今週はメルマガ遅れてしまいました(言い訳)。
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