実践!事業承継・自社株対策
持株会社を作るメリット【実践!事業承継・自社株対策】第274号

2025.11.06
Q:私は、昨年父から事業を引き継ぎましたが、まだ株式の承継はしていません。
というのも株価が高く、相続よりも前に譲渡や贈与で取得することが難しい状況です。ただ、相続で取得するとしても納税ができるか心配です。
懇意にしている銀行さんからの提案で、持株会社の設立を勧められました。これができれば、父がかなりの資金を取得できるようでした。
納税資金を確保できるのであれば、ぜひ活用したいのですが、何か気をつけることはありますか。
A:持株会社を利用した事業承継対策を簡単にまとめると以下の通りとなります。
1.相続人が持株会社を設立する。
2.持株会社は当該株式を購入するために借入れ等により資金調達を行う。
3.お父様が所有する株式を持株会社へ譲渡し、お父様は譲渡収入を得る。
まず、1番の持株会社を設立する時点では、設立の登記費用等がかかりますが、設立だけでは、基本的に大きな資金の流入・流出はありません。
その後、2番の持株会社が自社株式を購入するために、借入れ等の資金調達を実施することになります。
懸念点があるとすれば、ここで借りた資金を返済できるかどうか、ということになります。
さらに注意すべきは、自社株式の買取価額は、相続税評価額の原則的評価方式(類似業種比準価額等)ではなく、法人税法上の価額という、かなり高い価格で買い取る必要があるということです。
そのため、資金調達すべき金額が増加するとともに、自社株式が高い価格で現金化されることにより、かえって相続財産が増えてしまう可能性があります。
また、持株会社が調達した資金の返済は、購入した株式の配当金を原資に返済することが多いように思われます。
そのため、会社が安定的に配当を実施ができる程度の返済金額であるかどうかは、検討すべき事項となります。
結局のところご相談者様が、事業を通して返済することになります。
3番については、お父様は、法人税法上の価額で株式を譲渡することにより、多額の収入が得られる一方、譲渡所得に対して、所得税等が20.315%課されることになります。
これはかなり高額の税金になる可能性があります。
以上が留意点になりますが、ご相談者様がおっしゃられていた通り、借入という形にはなりますが、相続税の納税資金が得られるメリットはあります。
また、お父様の株式がすべて持株会社に移転することから、これ以上株価の増加を気にする必要がなくなります。
また、お父様が取得された資金を投資その他有効活用をすることもできますし、今までご苦労されてこられた分ゆっくり老後を満喫することもできます。
本スキームについては、本当に一長一短であり、ご相談者様やお父様がどのように考えるか、ということが重要となってきます。
ただし、一度、持株会社を立ち上げ株式を譲渡してしまうと、簡単には元に戻せないため、他により良い方法がないか十分にご検討いただければと思います。
《担当:税理士 青木 智美》
編集後記
急に寒くなりました。
そのせいか、風邪をひいてしまい、しかもかなり長引いています。なかなか、咳が収まらず、コロナを彷彿させます。
世間でもだいぶ流行っているみたいですね。
皆様におかれましては、十分お気を付けくださいませ。
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