実践!相続税対策
相続税評価と遺留分計算の違いに注意【実践!相続税対策】第389号
2019.06.05
おはようございます。税理士の北岡修一です。
最近の相続事例では、遺言があるケースが増えているように思います。
特に2018年には民法改正が行われ、遺言が作りやすくなってきていますので、これからは遺言のある相続が益々増えていくのではないでしょうか。
最近の相続事例でも、遺言はあるのだけれど、遺留分を侵害しているケースがありました。
親は遺留分のことなどは、まったく考えていなかったようですが、多くもらう子にとっては、遺留分のことを大変気にしています。
いつ、遺留分のことを言われるかと思うと、気が休まらないため、自分から話を持ち出して、遺産分割協議によって遺産を分けようかどうしようかと、悩んでいました。
遺言を書く時は、相続人がそうならないよう、是非、遺留分のことは頭に入れて書いて欲しいですね。
もし、遺留分を侵害するような遺言にならざるを得ない場合は、生前に相続人が納得できるよう話しておくか、遺言の付言事項にその旨を書いておくなど、しておいた方がよいでしょう。
遺留分とは、民法で被相続人に認められる相続財産に対する最低限の権利です。
極端な例、愛人に全部を遺贈して、遺された相続人の生活が困らないように、相続人を保護するために作られた制度です。
遺留分は、配偶者、子、父母(直系尊属)にのみ認められるものであって、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。
遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人である場合は1/3、その他の場合は、1/2となっています。
父、母の2人が相続人の場合は、遺留分1/3に、それぞれの相続分1/2を掛けて、それぞれ1/6となります。
相続人が配偶者と、子2人の場合は、配偶者は遺留分1/2に相続分1/2を掛けて、1/4となります。
子は、遺留分1/2に、相続分1/2、さらに子が2人いるため1/2を掛けて、それぞれ1/8となります。
さて、遺留分を計算する時に注意するのは、遺留分の対象になる財産の金額です。
相続があった場合には、まず、相続税の申告をするため、相続財産の相続税評価を行います。
これはあくまで相続税法や財産評価基本通達によって計算するため、遺留分の対象財産の評価とは違うので、要注意です。
特に気をつけるのは、土地の評価です。
相続税評価において、土地は路線価を基準にして評価することが多いですね。
ただし、遺留分の計算は、時価による評価が基本となります。
路線価は時価(公示価格)の8割を基準に決められていますので、相続税評価から路線価を計算するには、最低限でも、相続税評価を0.8で割り戻して計算する必要があります。
また、相続税評価においては、小規模宅地特例により、80%あるいは50%評価減されることがありますが、これはあくまで相続税の世界であり、遺留分を計算する時には、評価減前をベースとする必要があります。
さらに、遺留分の対象財産を計算するには、相続人に生前贈与された金額(特別受益)なども加算する必要があります。
最低限でも、以上のことに注意して、各人の遺留分の額がいくらになるか計算してみる必要があります。
その上で、各相続人に遺贈する額、生前贈与した額を計算してみて遺留分の額を超えているかどうか、計算してみてください。
なお、民法改正により2019年7月より、遺留分の計算に加算される過去の特別受益は、相続開始前の10年間の贈与に限定されることになりましたので、その点もご注意ください。
編集後記
今は、ある団体の国際大会で欧州に来ています。今日はドイツからイタリアに移動します。ドイツのイメージは質実剛健なところがありますが、イタリアはその真逆な感じですね。観光する場所もたくさんあり、自由時間にどこに行くか、とても迷っています(笑)。
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