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実践!相続税対策

相続時精算課税は十分注意を!【実践!相続税対策】第409号

相続時精算課税は十分注意を!【実践!相続税対策】第409号

2019.10.23

おはようございます。税理士の北岡修一です。

贈与税は、年間110万円までの贈与については、基礎控除の範囲内なので、贈与税がかからないことは、ご存知の方が多いと思います。

ただ、これでは、金額が少ないので、もっと一遍に贈与したい場合に、2,500万円まで無税で贈与できる制度があることは、ご存知でしょうか?

これを、相続時精算課税制度といいます。

相続時精算課税制度は、原則として60歳以上の親や祖父母から、20歳以上の子や孫に対する贈与について、適用することができます。

非課税枠は2,500万円までで、それを超えた場合は、超えた部分の20%の贈与税を支払うことになります。

ただし、名前のとおり、贈与をした者に相続があった場合には、相続税で精算する必要があります。

すなわち、贈与の時には税金はかかりませんが、相続があった時には、その財産の価額を相続財産に加算して、相続税を支払う必要があるのです。

2,500万円を超えて、贈与税を支払っていた場合は、その贈与税は相続税から控除することができ、控除しきれない場合は還付されます。

いわば、生前相続として財産を先にもらい、後で相続税を支払う制度と言えますね。

この相続時精算課税制度、いろいろと注意することがあります。

まずは、この制度の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日の間に「相続時精算課税選択届出書」を税務署に提出する必要があります。

もちろん、贈与税の申告も必要です。

この制度の適用を前提に、多額の財産の贈与を受けたのに、選択届を出し忘れたりすると、通常の高い贈与税がかかってしまいますので、要注意です。

また、一旦、相続時精算課税制度を選択すると、その贈与者と受贈者の間では、暦年課税(通常の110万円まで非課税の贈与)に戻ることができません。

たとえば、父親と長男だとすると、その親子の間の贈与は、相続時精算課税を選択した年から、ずっと相続時精算課税が適用されます。(他の者との間では、暦年課税を適用できます)

累計で2,500万円を超えるまでの贈与は非課税、超えた時から超えた金額の20%が贈与税、ということになります。

したがって、たとえその後の年に、年間110万円以内の贈与があったとしても、贈与税の申告をする必要があります。

先日も、私どものお客様で2,500万円を超えて、相続時精算課税を適用した方が、その後、110万円内の贈与だったので申告不要と思っていたとのことで、私どもに贈与をしたことを、言ってくれていませんでした。

それが後日判明したので、申告期限が過ぎてから申告し、20%の贈与税&加算税を支払うことになってしまいました。

きちんと言っておいたはずなのですが、やはり後になると忘れてしまうことも、多いようですね...。

また、その後に贈与者が亡くなった時には、相続税の計算上、相続時精算課税で贈与を受けた財産を、相続財産に加算する必要があります。

たとえば、長男が相続時精算課税で贈与を受けたいた場合などで、他の兄弟(相続人)が、それを知らなかった場合、トラブルになる可能性があります。

もちろん、多額の財産をもらっていたことについてもそうですが、それ以上に、他の相続人の相続税が上ってしまう、ということにも問題があります。

どういうことかと言うと、相続税の計算は、まず全体の遺産総額を法定相続分で按分した額に対して、税率が適用されます。

相続時にある相続財産だけでなく、過去に相続時精算課税で贈与をした財産も相続財産に加算した上で、税額が計算されるのです。

ご存知のように相続税は累進課税ですので、財産が多くなればなる程、税率が上がります。

長男が過去にもらった財産を加算することで、たとえば10%の税率が30%になって、他の兄弟の相続税が増える...。

長男は過去に払った贈与税を控除して、相続税は安く済んだ...。などとなると、他の兄弟は黙ってないかも知れませんね。

トラブルのもとになりかねない、ということです。
相続時精算課税を適用する場合には、他の兄弟にも開示しておくことが肝要ではないでしょうか。

さらに、相続財産に加算する価額は、相続時精算課税で贈与をした時の価額になります。

贈与の時よりも相続時の方が、価額が上っていれば、低い価額で相続税を計算できますので、節税になります。

ただし、そうとも限りませんね。贈与から相続の間にどうなるかわかりません。土地などは評価額が下がってしまったり、家屋が災害などで損壊してしまった場合などは、相続時にない財産に相続税がかかるなどの悲劇が起こりかねません。

私どものやった例では、同族会社の株価が低くなったところで贈与をしたのですが、その後、評価通達が改正になり、大会社の基準が低くなったため、逆に評価が下がってしまっている、なんてこともあります。

さらには、特例事業承継税制ができたりして、こちらを使う手もあったのかも知れません。

このように、法律が変わることもあるのです。

他にも、暦年課税を使えなくなってしまうことは大きいですね。
年間110万円、あるいは最低税率の使える年間310万円までの贈与を毎年していく方が、効果が大きいこともあります。

310万円でしたら10年やれば、3,100万円贈与できますので。しかも、この贈与により移した財産は、相続時に加算する必要もないなど、暦年贈与のメリットも大きいです。

ということで、長くなりましたが、相続時精算課税制度を使う時は様々なケースを十分考えて、実行することをお奨めします。

編集後記

ついこの間まではラグビーで湧いていた日本。そして昨日は一転、厳かな即位礼正殿の儀。とても対照的な感じがしましたね。多様な面を世界に発信している日本、とても誇らしい気がしました。

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