実践!相続税対策
名義預金と贈与成立の問題【実践!相続税対策】第403号
2019.09.11
おはようございます。税務部の青木智美です。
相続税の調査でよく問題になる名義預金については、皆さま既にご承知置きのことと存じます。
今回はその名義預金がどのような点で問題となり、相続人名義の預金でもあるにもかかわらず、被相続人の財産となってしまうのかについて考えてみましょう。
名義預金とは、被相続人が相続人等の名義の預金口座に自身の金銭を入金し、その口座を自ら管理をしている預金のことです。
ポイントは、3つあります。
1.資金源は誰か?
2.口座の存在を、資金を受け取った方が知っているか?
3.誰が口座を管理しているか?
それでは1つ1つ確認していきましょう。
1.資金源は誰か?
たとえば、親族名義の通帳に1億円の預金があり、その預金の名義人が、どのようにその預金を貯蓄してきたかを説明できない場合は、名義預金と言われるリスクがあります。
つまり、特に被相続人が資産家などであるときに、その資金源が被相続人のお金ではないか、と推察されてしまうのです。
毎年の収入に対して、貯金額が相当に多い場合は、どのように増えてきたかを説明できるようにしておくことが大事です。
2.口座の存在を、資金を受け取った方が知っているか?
その資金源が、被相続人からの贈与であれば、それはそれで説明がつきます。ただし、それが贈与かどうかを明確にしておく必要があります。
そもそも贈与とは、民法第549条『贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって、その効力を生ずる』と規定しています。
相手方の受諾が必要、つまり、受け取った側が『もらった』という承認ないし確認が必要ということになります。
このため単に、相手の通帳に資金を振り込んだことのみでは、贈与が成立しないことに注意が必要です。
3.誰が口座を管理しているか?
他人(親族)名義の預金を、贈与した被相続人が管理している場合、実質的には、被相続人の預金と何ら変わりがないといえます。
たとえば、お孫さんに贈与した場合、その預金の存在を知らせると、お金の無駄遣いが心配な部分もあるとは思います。
しかし、預金の管理はきっちりと受贈者にしてもらわなくてはなりません。(未成年の場合、親が管理することもありますが)
名義預金は、税務署との争点になるだけでなく、相続人間の争いになることもあります。
他の相続人が、自身の取り分を増やすため、その預金も被相続人の財産であり、相続財産に含めるよう主張するかもしれません。
こうなると、問題は税務署だけではなくなってきてしまいます。
名義預金と言われないために、特に必要な書類は『贈与契約書』です。
贈与が成立していれば、名義預金ではなく受贈者の預金になります。
贈与が成立しない場合は、たとえ15年前に資金を移動していたとしても、被相続人の相続財産として相続税の課税対象となります。
この場合には、贈与税の時効という概念にも該当しないことになります。
このように、名義預金と贈与の成立は特に注意すべきでことです。
贈与契約書を作成すること、贈与した事実を明らかにするため、銀行振り込みにより贈与すること、そして通帳管理は受贈者にしてもらうことです。
名義預金については、特に税務調査の対象になりやすいですので、しっかり対策をして、否認されないようご注意ください。
編集後記
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