不動産 税金相談室
相続後の自宅の売却【不動産・税金相談室】
2016.11.04
Q 同居していた母が亡くなり自宅を相続しましたが、私1人で住むには家が広すぎるため売却することとしました。
売却代金の一部は相続税の納税資金に充てたいと考えていたため、早めに売却を決めたい事情もあり、相続税の申告期限までに売買契約を締結して、申告期限後に新居となるマンションへ引っ越す予定です。
そこで、相続税申告と譲渡所得税申告にあたって、注意すべき点があれば教えてください。
A ご質問のケースでは、相続と譲渡にあたって税務上いくつか注意していただきたい点があります。
まず、相続に関しては「小規模宅地等の特例」についてです。
同居していた親族が自宅を相続した場合には、小規模宅地等の特例といって、自宅が建っている土地の評価の計算上、330m2までの部分について、その評価額を80%減額することが可能です。
ただし、この特例を受けるためには、相続開始から相続税の申告期限まで、「所有していること」と「居住していること」が、要件となっています。
ご質問の場合、早めに売買を確定したいとの事情から、相続税申告期限までに売買契約を締結されているようですので、所有の要件に該当しているかどうか、判断が難しいところです。
一般的には、仮に申告期限までに売買契約を締結していたとしても、その引き渡しと残金の精算が申告期限後である場合には、申告期限において所有していると考えて差し支えないと思われます。
したがって、ご質問者が締結されている売買契約上、引き渡しが申告期限後となっているか否か、ご確認いただく必要があるでしょう。
なお、引き渡しが申告期限後となる場合、通常は残金の精算も引き渡し時になりますので、納税資金に充てることが難しいと予想されます。
この場合には、一時的にご自身の預金で充当するか、借入金等の手当てが必要となります。
次に、譲渡所得の申告にあたっての留意点です。
自宅を売却する際の特例としては、居住用財産の3,000万円特別控除などが用いられますが、ご質問のケースでも特例の適用が可能です。
この特例を使うことにより、譲渡益から3,000万円を限度として控除することができますので、譲渡所得税の軽減をはかることができます。
なお、相続の場合の譲渡益の計算は、お母様の取得時期および取得価額を引き継いで計算することになりますので、ご留意ください。
また、相続税が発生するようですので、支払った相続税のうち、自宅の土地建物の価額にに相当する金額を、譲渡所得計算上の「取得費」に加算することができます。
これを相続税の取得費加算の特例といい、相続税の一部を取得費に加算することで譲渡益を圧縮することができ、税負担を減らすことができます。
以上、相続後の自宅の譲渡にあたっては、通常の居住用財産の特例のほか、相続税の取得費加算の特例についても、留意しておく必要があるでしょう。
相続と譲渡、それぞれメリットの大きい特例が絡むこととなりますので、事前に十分ご確認いただいた上で、ご活用いただければ幸いです。
《担当:樋口》
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