実践!相続税対策
子を飛び越えて孫に自宅を相続させたい【実践!相続税対策】第357号
2018.10.24
皆様、おはようございます。
税理士の北岡修一です。
今日はちょっと長めになり、配信が遅くなってしまいましたので、早速本文に行きたいと思います。
では、本日も「実践!相続税対策」よろしくお願いいたします。
子を飛び越えて孫に自宅を相続させたい
最近あった相談を、若干アレンジして書きたいと思います。
相談者は80歳前後のご婦人で、既に夫は他界し、渋谷区の一軒家にひとりで住んでいます。
敷地は50坪くらいですが、路線価評価で8,000万円くらいになります。財産は、その他に現預金が2,000万円くらいとのことです。
将来の相続人は、子2人ですが、既に独立し、それぞれ自分の持ち家に家族とともに住んでいます。
今回の相談は、相続の際は不動産が1つで、共有で相続させるのもよくないし、
土地と現預金をそれぞれ一方に相続させても、バランスが合わないので、いっそのこと、孫に自宅を相続させたいが、そういうことはできるでしょうか? ということでした。
孫は、現在、関西の方の大学4年生で、来年就職が決まっているとのこと。現在は、大学の近くのアパートに入学以来住んでいるということです。
相談者の方は、その孫をとても可愛がっているようで、単純にそれ故に自宅をあげようと思っているようです。
ただ、それは相続税的にも、非常に良い方法ではないかな、と思います。
もし現状で子2人が相続すると、自宅敷地について小規模宅地特例が受けられないので、かなりの相続税になります。
相続財産 自宅敷地8,000万円+現預金2,000万円=1億円
課税価格 1億円-基礎控除額4,200万円=5,800万円
1人当り 5,800万円÷2人=2,900万円
相続税額 (2,900万円×15%-50万円)×2人=770万円
となります。(自宅建物は評価が低いので考慮していません)
子が相続すると、2人とも持ち家があるため、小規模宅地特例を受けられないのです。
孫が自宅を相続(遺言を書いて遺贈する)した場合であっても、要件を満たしていれば、小規模宅地特例を受けることができます。
小規模宅地特例は、相続人に限らず、親族であれば受けることができるのです。
居住用の小規模宅地特例は、330m2まで80%評価減をすることができます。上記の自宅敷地8,000万円が、1,600万円になるのです。
そうすると相続財産は、3,600万円となりますので、基礎控除額を引くと、課税価格はゼロ、相続税もゼロ、ということになります。
孫に遺言で相続させると、相続税は2割加算になるのですが、そもそも相続税がゼロなので、2割加算も適用されません。
孫は現状、家なき子に該当するため、小規模宅地特例を受けることが可能になります。
家なき子として小規模宅地特例を受けるためには、いくつか条件があります。
被相続人の配偶者および同居している親族がいないこと、被相続人が亡くなる前3年間、自己または3親等内の親族が所有する家屋に住んでいないこと、などです。
相談者は現在、1人で住んでいますし、孫は4年近くアパートを借りて住んでいるということで、現状は上記の要件は満たします。
来年社会人になって、東京に戻り親と同居すると、要件を満たさなくなってしまいますが、社宅やアパート住まいであれば、要件を満たします。
祖母と同居しても、今度は家なき子としてではなく、同居親族として、小規模宅地特例を受けることができます。
ただ、注意点は相続人である子の遺留分を侵害している、ということです。
自宅敷地は、相続税評価は8,000万円ですが、時価は1億円とします。現預金合わせて1.2億円の相続財産になります。
遺留分は、全体の1/2の6,000万円、相続人1人当たり3,000万円ということになります。
現預金を半分ずつ相続人が相続したとして、1,000万円、遺留分を侵害しているのは、1人あたり2,000万円ということになります。
相続人は、親と叔父ということですから、理解してくれていれば問題ありませんが、親はともかく、叔父が文句を言う可能性はありますね。
その点をしっかり、事前に対策をしておけば、孫に自宅を遺贈することは、相続税対策上、非常に効果的な方法であると言えます。
編集後記
現在、出身大学の税理士OBを集めた会を作っているのですが、昨日は、同窓の他の士業の会の代表者を集めた士業の会を行いました。弁護士や社労士や不動産鑑定士など、それぞれに士業の課題やしくみなどをお互いに出し合うのは、興味深いですね。同じような悩み、まったく違う悩み、など話し合って、かつ同窓ということもあり、大変盛り上がった会になりました。
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