相続した不動産の現物出資【不動産・税金相談室】

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土地建物所有者

Q 昨年父の相続が起こり、母が不動産を相続しました。今後の相続も考えると、不動産を会社に現物出資して会社で収益が上がるようにしていきたいと考えていますが、いかがでしょうか?

A 会社に不動産を現物出資することは可能です。現物出資することにより、不動産という資産が、有価証券(株式)に変わることになります。

有価証券になれば、お母様から子らに生前贈与などを行いやすくなり、柔軟な相続税対策も可能になってきます。

また、登記なども会社に1回やっておけばよく、将来の相続でまた不動産登記をする必要もなくなってきます。

さらに、賃貸不動産などであれば、収益は会社に計上されることになり、役員報酬などで親族に所得を分散したり、法人で幅広く経費を計上したりするなど、個人所得よりも節税の幅が広がってきます。

非常にメリットが多いようですが、実は大きなデメリットがあります。

それは、不動産を現物出資すると、個人は不動産を譲渡したものとみなされ譲渡所得が発生する、ということです。

出資なので譲渡ではない、と思われるかも知れませんが、これは不動産を、第三者に譲渡して、その譲渡代金をもって出資をした人との課税の均衡をはかる、という意味もあります。

不動産を第三者に譲渡した人は、当然、所得税がかかるのに、不動産を現物出資した人にはかからないというのでは、不公平である、ということです。

この現物出資した場合の譲渡価額は、取得した株式の価額によりますが、基本的には不動産の時価をベースにすることになります。

相続で取得した財産を売った場合、譲渡所得税の計算上、譲渡価額から差し引ける取得費は、被相続人(お父様)の取得価額を引き継ぐことになります。

昔から所有している不動産であれば、取得費が相当低いか、不明ということもあります。その場合には、取得費は譲渡価額の5%とされ、95%が譲渡益、ということになります。こうなると多額の税金がかかってしまいます。

もう1つデメリットとしては、会社の資本金が高くなってしまうことです。不動産であればそのなりの価格になるでしょうから、資本金1,000万円は優に超えてしまう、ヘタすると億を超えてしまう場合もあるでしょう。

資本金1,000万円を超えれば、消費税の課税事業者になりますし、均等割も上がります。まして、1億円を超えると中小法人の様々な優遇税制は使えなくなってしまいます。

このように現物出資は資本金を自由にできない、という不利があります。

以上のようなことがあるため、不動産の現物出資はあまりお奨めできません。
むしろ、会社を作るなり、既存の会社を使うなりして、会社が個人の不動産を買い取る形にしてはいかがでしょうか?

買取りであれば、譲渡価額や譲渡代金の支払い方法なども、柔軟に決めることも可能です。収益を会社に移したいだけであれば、土地は個人で持ったまま、建物だけ会社に譲渡すればよいのです。この場合には、簿価で譲渡すればよく、個人には譲渡所得税は発生しません。

以上、状況にもよりますが、安易に不動産の現物出資は行わない方がよいかと思います。

《担当:北岡》

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