限定承認に係るみなし譲渡【不動産・税金相談室】

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相続

Q 先日、父の相続が発生し、限定承認により相続の手続きを進めようと考えています。相続人は、私と弟の二人です。
その場合の税務に関する注意点を教えてください。

A 前回、私高橋が担当させていただいた2015年5月8日の号では、限定承認をした場合の税務上の注意点として、

 1.相続人の確定申告   : 家賃収入に関する申告
 2.被相続人の準確定申告 : みなし譲渡所得に関する申告

の2点があるというお話をさせていただきました。
1についてはその際、ご説明いたしましたので、今回は2についてお話させていただこうと思います。

たとえば、お父様の財産が不動産1億円、借入金が2億円だった場合、限定承認をすると、不動産1億円と借入金を1億円相続することとなります。
その際、不動産が、お父様からご質問者様や弟様へ移転することとなりますが、これについて、「お父様に対し、譲渡所得税」が課税されてしまいます。
これが、2の「みなし譲渡所得」です。

つまり、債務超過だから、せっかく限定承認したのに、追い打ちをかけるように、譲渡所得税が課税されてしまうのです。
これは、一見、非常に厳しい課税のようにも見えますが、よくよく考えてみると、実は、これは借入金の返済をしなければならない相続人への救済措置なのです。

たとえば、上記の例で、ご質問者様と弟様が、それぞれ不動産と借入金を半分ずつ限定承認で相続したとします。

ご質問者様は不動産を保有したまま、借入金を自分のお金でコツコツ返済しますが、弟様は不動産を売却し、それをそのまま借入金の返済に充てることとしたとします。
この場合、普通は、弟様が不動産を売却したことにより、弟様に対して譲渡所得税が課税されてしまいます。

すると、せっかく5,000万円の売却代金を、借入金5,000万円の返済に充てようとしたのに、譲渡所得税が課税されてしまうと、その分、返済資金が不足してしまいます。
これでは、結局弟様も、自己資金で借入金を返済しなければならなくなり、何のために限定承認をしたのか、わからなくなってしまいます。

そこで、このような事態を回避するために、弟様には譲渡所得税を課税せず、そのかわりに、お父様に対して譲渡所得税を課税することとなったのです。
とは言っても、お父様は既に亡くなられていますので、この譲渡所得税も他の借入金と同様、お父様の債務ということになります。

ということは、相続人は、この譲渡所得税も含めて、お父様の債務を1億円引き継げばよいだけですので、実質的に返済の負担は変わらないことになります。実質譲渡所得税はないのと同じです。
これで、安心して不動産の売却をして、債務の返済に充てることができるというわけです。

このように、限定承認の場合のみなし譲渡課税は、しっかりと申告をしておけば、決して恐れる必要はありませんが、お父様の準確定申告でこの申告が漏れてしまうと、多額の加算税や延滞税が課税されてしまいます。

これは、当然、お父様の債務ではありませんので、限定承認の1億円とは別に、相続人自身が納付することとなります。
これでは、せっかくの救済措置も台無しになってしまいますので、皆様も万が一、将来限定承認をすることになった場合は、しっかりとみなし譲渡所得の申告をするようご注意ください。

《担当:高橋》

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