事業用財産の買換え特例について【不動産・税金相談室】

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Q 私は、長年個人事業で小売業を営んできましたが、高齢であるため、この度廃業することとなりました。
店舗の建物は、私名義ですが、土地は借地ですので、地主さんに借地権を売却する予定です。
今後の収入のことも考え、この売却代金を基に、既に所有している土地にアパートを建築し、不動産賃貸業を始めようと考えています。

このような場合、「事業用財産の買換え特例(以下、買換え特例とします)」という制度により、譲渡所得税が大幅に節税できるとの話を聞きましたが、何か税務上の注意点はありますでしょうか?

A 確かに、買換え特例を適用した場合、売却益の80%部分※について課税されないため、譲渡所得税を大幅に節税することが可能となります。

※従来は、80%でしたが、平成27年の税制改正により、割合が変わることがあります。
(詳細は、平成27年1月30日「税制改正大綱 事業用資産の買換え」をご参照ください。)

しかしながら、実は、この特例が本当に節税となるかについては、いくつか注意すべき点があります。

(注意点1)買換え特例は、課税の「減免」ではなく「繰延」である。

この制度は、売却の際は、売却益の80%部分には課税されませんので、一見するとかなりの節税ができたように見えてしまいます。
しかしながら、この80%部分は、決して免除されるわけではなく、実は、将来しっかりと課税されてしまうのです。

ご質問者様のように、賃貸アパートを建てた場合、入居者から家賃収入が入り、今後毎年不動産所得の確定申告をしていくことになるかと思います。

その際、この賃貸アパートの建築費用等は、「減価償却費」として毎年少しずつ必要経費として計上され、これにより節税効果が発生することとなります。
しかし、この買換え特例を使いアパートを取得した場合は、80%減免された部分について、減価償却費が計上できない、ということになります。

そのため、毎年の不動産所得が増大してしまい、その分税金が余計に課税されてしまうこととなり、最終的には、その80%部分についてもしっかりと課税される仕組みになっているのです。

つまり、売却時に課税されるはずだった80%部分の課税を、その後の不動産所得の申告時まで、あるいはその不動産を譲渡するまで「待ってあげた」というだけなのです。

(注意点2)税率の差に注意

上記のように、ただ「待ってあげた」だけであれば、プラスマイナスゼロですので、特に問題はありません。
しかしながら、「税率の差」にも十分注意する必要があります。

譲渡所得税と不動産所得の所得税率には違いがあり、具体的には、次のようになっています。(住民税を含み、復興税については、省略させていただきます)

 ○ 譲渡所得税  20%    ※保有期間5年以内の場合は39%
 ○ 不動産所得  15%~55% ※超過累進税率

通常、都内で夫婦二人が生活していけるだけの家賃収入がある場合は、不動産所得の税率は累進税率となり、最高部分が30%程度になることも見込まれます。
譲渡所得税の税率は、長期で住民税も合わせて20%ですので、税率に大きな差が生ずることがあります。

この場合、「20%の課税を待ってもらって、その後30%で課税されてしまう」ということになります。
つまり、買換え特例を適用してしまったことによって、かえって税金が高くなってしまうことがある、ということです。

このように、買換え特例を使う場合は、税負担が大きくなってしまう可能性がありますので、十分に注意する必要があります。
買換え特例には実質的な節税効果がなくとも、課税を待ってもらうことにより、買換え資金が不足しないというメリットもありますので、総合的に検討した上で、適用することが大切です。

《担当:高橋》

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