
Q 現在、私は30年前に購入した土地を、他人のAさんに貸しています。
この度立退き料(借地権の買い戻し料)を、6,000万円お支払いし、建物を取壊した上で、売却したいと考えております。
幸いAさんも了承してくれましたので、近々手続きに入る予定です。
この件に関して、何か税務上注意すべき点はありますでしょうか?
A まず、この土地については、現在あなたが「底地部分」をAさんが「借地権部分」を持っている状態ですね。
これに対し、あなたがAさんに立退き料を支払うことで、借地権を消滅させることになります。
言いかえると、あなたがAさんから「借地権部分」を買い戻した状態というように考えられます。
その後土地を譲渡されたとのことですが、土地を譲渡した場合、譲渡所得に対して、所得税と住民税が課税されることになります。
この譲渡所得については、その譲渡した財産をどれぐらいの期間所有していたのかによって、税率が変わってきます。
具体的には、次のとおりです。
短期譲渡所得:譲渡した年の1月1日で、所有期間が5年未満
→ 所得税率:30%
→ 住民税率: 9% 合計:39%
長期譲渡所得:譲渡した年の1月1日で、所有期間が5年超
→ 所得税率:15%
→ 住民税率: 5% 合計:20%
2倍近くも違いますね!
したがって、譲渡所得を計算する場合は、この「所有期間の判定」というものが、とても重要になってきます。
それでは、これをご質問の例に当てはめて考えてみましょう。
この土地の所有期間は、一体何年でしょうか?(お考えください)
答えは、30年…ではありません。(半分正解です。)
こう考えた方はいらっしゃらないでしょうか?
「Aさんから6,000万円で買い戻した”借地権部分”はまだ1年も経っていないのでは?」
そのとおりです。
税務上の取り扱いも、そのようになっています。
したがって、ご質問の件では…
借地権部分 → 短期譲渡所得で税率39%
底地部分 → 長期譲渡所得で税率20%
で課税されることとなります。
つまり、借地権部分には高い税率で課税されてしまうこととなります。
ただし、借地権部分は、買い戻してすぐに売却していますので、値上り益はほぼないものと考えられます。
したがって、一般的には短期譲渡所得は、発生しないものと考えられ、実際の税負担はないものと思われます。
以上となります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
《担当:高橋》