相続税の取得費加算(1)【不動産・税金相談室】

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Q 私は、父からの相続で自宅の土地・建物を取得しました。父は特に資産家というわけではなく、財産と言えばこの土地・建物ぐらいです。

税理士さんに相談したところ、相続税が1,000万円ほど発生するといわれてしまいましたが、あいにくそんなお金は持っていません。また、住宅ローンがまだ残っており、この土地には抵当権が設定されているため、物納も出来ないとのことです。

そこで、泣く泣く自宅を売却することになったのですが、売却代金から住宅ローンを返済し、さらに所得税・住民税まで取られてしまうと相続税を払えるかどうか不安です。

聞くところによると、相続税額を必要経費として認めてもらう制度があるとのことですが、どのような制度でしょうか?

A まず、譲渡所得の金額は…

譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除

という計算式でいわゆる譲渡益を計算し、これに課税されることとなります。
ただし、ある要件を満たせば、相続税額のうち一定金額を、この取得費の部分に加算することができ、所得税額を軽減することができます。

これを(そのまんまですが)相続税の取得費加算と言います。

それでは、まずこの制度の適用を受けるための要件からご説明しましょう。

(1)相続又は遺贈により財産を取得していること
(2)財産を取得した人に相続税額があること
(3)相続開始の日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡していること

これが、要件となります。

(1)・(2)については、大丈夫かと思います。

(3)については、譲渡ができる期間を示しています。
例えば、相続開始日(亡くなられた日)が、2013年4月1日の場合、いつからいつまでの間に譲渡をしなければならないのでしょうか?

●いつから?→相続開始の日の翌日から → 2013年4月2日
●いつまで?→相続税の申告期限(2014年2月1日)の翌日以後
3年以内 → 2017年2月1日

となります。(2013年4月2日~2017年2月1日)

条文をよく読まずに『相続税の申告期限から3年』などと覚えていると、『いつから?』の部分を、2014年2月1日からと勘違いしてしまうことがよくありますので、注意が必要です。
(相続開始の直後から売却もしていいのです。)

それでは次に、どれぐらいの金額が加算されるのか、簡単な例を使って考えてみましょう。

例)相続財産 1億円
相続税額 1,000万円
譲渡資産 5,000万円

1,000万円×5,000万円/1億円 = 500万円

となります。

要するに、相続税額1,000万円は、相続財産全体の1億円にかかるものなので、そのうち、今回譲渡する資産5,000万円についてかかった相続税500万円だけ取得費に加算していいですよ。ということです。

※債務控除、生前贈与、相次相続控除などがある場合は一定の調整が必要です。

また、譲渡資産が土地等(土地や借地権など)の場合には、もっと有利な取り扱いがあります。

例)相続財産1億円(うちA土地5,000万円、B土地3,000万円)
相続税額1,000万円
譲渡資産(B土地3,000万円のみ)
  
本来なら譲渡資産3,000万円分の相続税額を計算するため…

1,000万円×3,000万円/1億円 = 300万円

と計算するところを、そうはせず...

1,000万円×(3,000万円+5,000万円)/1億円 = 800万円

と、A土地5,000万円も含めて、計算することができます。

要するに、譲渡資産が土地等の場合には、譲渡していない土地の分の相続税額も取得費加算出来る、ということです。

なぜそんなことをするかと言うと、これは、平成5年のバブルの時代に設けられた特例的な取り扱いだからなのです。
  
この時代は、土地の値段が高く、今よりも相続税の納税に苦労する人が多かったため、所得税の負担をより軽減してあげようということで、このような計算をすることとなりました。

しかしながら、バブル崩壊から20年以上経った今でも、この取り扱いが残っているため、現在、この取り扱いの廃止が検討されています。

以上、相続税の取得費加算の概要をご説明しましたが、詳細な内容は次回以降、5月10日号と5月24日号でお話しさせていただきます。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。